宗教法人の行う「宗教活動」は非課税、「収益事業」は課税対象です。
宗教活動とは、いわゆるお布施や寄付などを差し、お守り/お札の販売なども実態が限りなく喜捨に近いことから宗教活動として非課税となっています。
一方の収益事業とは、それら宗教活動には該当しないものの宗教法人として活動の認められている事業です。
宗教法人による駐車場の運営などは収益事業として扱われ、法人税が課せられます(ただし、通常の株式会社などの一般法人に比べると税率は軽減される)。
さて、ではこの「宗教活動」か「収益事業」かの判断をめぐり法廷で争った事例を見てみましょう。
ペットの葬儀事業は「宗教活動」か
平成20年の事例となりますが、とある宗教法人がペット飼育者からお金を受け取り、葬儀事業を行なっていました。
これに対し、税務署長がこの事業は収益事業に該当するという判断を下し、法人税の決定を行なったという事案がありました。
宗教法人側はペットの葬儀という行為が宗教的な意味合いの強いものであり収益事業には該当しないと主張し、法廷で争われることとなりましたが、最高裁は宗教法人側の主張を認めず宗教法人側が敗訴しています。
ここでの争点は、「ペットの葬儀事業は収益事業に該当するか」ということになりますが、どのようなロジックをもってこの決定がなされたのでしょうか。
何をもって「収益事業」とみなすか
ここで論点になってくるのは、一体全体、何をもって「収益事業」とみなすかということです。
最高裁はこの判断の根拠となるポイントとして、以下の2点を挙げています。
ポイント①:「お金の支払い」はどのような意味合いか
事業に伴って、「お金の支払い」という形で対価が渡されるわけですが、これがどのような意味合いだったか、ということです。
つまり、それが何かの役務の対価として支払われているのであれば収益事業とみなされるべきであり、喜捨等の性質を持つものであれば宗教的な活動とみなされるだろうということになります。
この事案では、ペットの葬儀が「料金表」として価格を全面に出していたことで、極めて役務の対価に近い性質を持つだろうと判断されました。
お気持ちとしてお金を渡す…ということであれば料金表はなく支払う側の善意に基づいて支払いがなされるだろうということですね。
ポイント②:当該事業は、その他の一般事業者と競合するか
さて、もう一つの視点は、宗教法人でない事業者と競合するかどうかです。
他に競合するような事業者が存在している場合、それは収益を目標とした「収益活動」でしょうという考え方です。
この視点に照らし合わせても、この宗教法人の行なっていた事業はビジネスモデルからマーケティングの方法まで一般事業者と基本的に同じであり、競合すると言える、つまり「収益事業」の性質を有すると判断されました。
まとめ ー宗教法人の税金の意味ー
宗教法人の税金は「宗教活動の意味合いが認められるか」という点によって扱いが変わってくるものです。
いくら宗教法人側が宗教性を主張しようとも、何をもって「宗教活動」とみなすかは国が判断することなので、各宗教法人がしっかりと勉強しておくことが大切です。